古代クメール王朝の傑作とも言われるコー・ケー遺跡群は、カンボジアを代表する観光スポットの一つ。神秘的な雰囲気が漂う中央祠堂や、象の彫刻が彩る神殿など、美しい石刻やレリーフが数多く残されています。周辺には多くの遺跡が点在しており、時間が許せばゆっくりと観光することができます。カンボジア旅行の際にはぜひ訪れたい場所の一つです。
コー・ケー遺跡群とは?
コー・ケー遺跡群は、ジャングルの奥深く、アンコール遺跡群から北東に約90キロ離れた場所にあります。この地域には、30から60ほどの遺跡が未だ残っています。周辺の約81㎡の地域は、カンボジアの遺跡管理局であるアプサラ機構によって、保護地区として制定されています。
この遺跡群は、コー・ケー出身のジャヤーヴァルマン4世が王位についた際に一時的な王都となり、その後息子のハルシャーヴァルマン2世が継承したと言われています。しかし、コー・ケーが王都として使用されたのはたったの16年間であり、928年から944年の短い期間でした。
それでも、コー・ケーには素晴らしい建築技術が集められており、特にプラサット・トムという巨大なピラミッド型の寺院は見応えがあります。この寺院を含めた装飾に使われたレリーフや彫刻は、クメール芸術の中でも際立って美しいコー・ケー様式として知られています。
コー・ケー遺跡群は、王都がアンコールに戻された後、徐々に忘れ去られ、略奪に遭いながらもジャングルにその姿を残していました。そのため、コー・ケー遺跡群は手つかずの状態で残っており、当時の様子をうかがい知ることができます。特に、高さ35メートルのプラサット・トムから見る樹海の眺めは絶景です。
コー・ケー遺跡群の歴史
アンコール王朝は、802年にジャヤーヴァルマン2世によって創始され、最初の王都はロリュオス遺跡群に建てられました。しかし、889年にヤショーヴァルマン1世がプノン・バケンの丘陵を中心(現在のアンコール・トム周辺)に都を移し、ヤショーダラブラが新たな王都となりました。
928年にジャヤーヴァルマン4世が即位し、コー・ケーに王都を移すことを決定しました。彼は、自分の出身地であるシェムリアップ郊外に多数のヒンドゥー教寺院やバライ(貯水池)を建てました。その後、息子のハルシャーヴァルマン2世によって、コー・ケーは王都として16年間栄えました。ただし、コー・ケーという名称は後世の付けられたものであり、当時は「チョック・ガルギャー」と呼ばれていました。
しかし、928年にジャヤーヴァルマン4世が王位を奪い、王都は再びヤショーダラブラに戻されてしまいました。なぜコー・ケーが忘れられてしまったのかについては、史料による記述からは解明されていない部分があり、今後の研究が期待されています。
コー・ケー遺跡群のみどころ
コー・ケー遺跡群は、広さ約9㎢にわたって点在しています。現在は20箇所ほどが一般的に見学可能ですが、未だに密林に覆われた遺跡もあります。周囲には地雷が埋まっている可能性があるため、注意して訪れることをお勧めします。
遺跡群の中心には「ラハール」という名のバライ(貯水池)があり、バライの奥には現代のコー・ケー村があります。また、バライの周辺には小さな遺跡が点在しています。
コー・ケー遺跡群のすべてを観光するなら丸々1日が必要となります。小さい遺跡が点在をしているコー・ケー遺跡群ですが、代表的な遺跡はプラサット・トムが挙げられます。プラサット・トムの見どころに絞ってご紹介します。
プラサット・トム
コー・ケー遺跡群の代表的な寺院である「プラサット・トム」は、古代カンボジアの王都の中心だったとされています。クメール語で、プラサットは「寺院(または遺跡)」という意味を持ち、トムは「大きい」という意味ですので、直訳すると「大きな寺院(遺跡)」となります。
環濠に囲まれた建物で構成されています。この寺院は、高さ2メートルのガルーダ像が発見された場所としても有名です。重厚感ある姿が印象的なこのガルーダ像は、現在、プノンペンにあるカンボジア国立博物館で展示されています。
プラサット・トムの入り口は荒廃しており、大きな石が散乱していますが、周囲の壁には美しい連子窓の彫刻が施されており、内部にはレンガ造りの建物が並んでいます。
巨大なピラミッド「プラン」
寺院の裏には「プラン」と呼ばれる巨大なピラミッド型の建物があります。基壇は7段に重なっており、中央には高さ約35メートルの頂上まで続く階段があります。建設時には頂上に中央祠堂が建てられていましたが、現在はその一部しか残っていません。
頂上に登ると、青々とした森に囲まれ、360度のパノラマで地平線まで見渡せる素晴らしい景色が広がっています。
白い像の守護神プノー・ダムレイ・ソー
プノー・ダムレイ・ソーは、ちょうどピラミッドを1周した裏側にあります。娘を待ち続けた白い象の王様のお墓という伝説が残っています。
ピラミッドと言えばエジプトのスフィンクスが有名ですが、プラサット・トムのピラミッドは白象の神「プノー・ダム・レイソー」が守護しています。
男性器を祀るプラサット・リンガ
また、プラサット・トムから時計回りに約1.5キロ進むと、「プラサット・リンガ」があります。大きな砂岩でできた祠堂が建ち並び、中央には直径1メートルのリンガがヨニを台座にして祀られています。リンガとは、男性器を模したシヴァ神の象徴で、女性器を模した四角いヨニの上に置かれるのが一般的です。このプラサット・リンガでも同様に、ヨニに注がれた聖水をリンガの上にかける儀式が行われていたとされています。このリンガは非常に大きく、他では見ることができないほどです。
コー・ケー遺跡群へ行こう
いかがでしたか?コー・ケー遺跡群は、美しいレリーフや彫刻、独特の建築様式が多く残るカンボジア屈指の歴史的遺産です。豊かな歴史と文化を感じさせる遺跡群は、多くの人々を魅了し続けています。ぜひ、コー・ケー遺跡群を訪れ、その圧倒的なスケールと美しさを肌で感じてみてください。