カンボジアは、アンコール・ワットをはじめとする遺跡観光で有名ですが、近年はサーカスが新たな人気スポットとして注目を集めています。カンボジアの伝統を踏まえたパフォーマンスは、高い品質と評価を受けており、笑いや感動、迫力あるショーで、忘れられないシェムリアップの夜を過ごすことができます。
ファー・カンボジア・サーカスとは
ファー・サーカス(PHARE, THE CAMBODIAN CIRCUS)は、2013年にシェムリアップで初めてショーを開始したサーカス団で、今ではカンボジア旅行の定番スポットの一つとして認知されています。彼らはカンボジアの文化や歴史を取り入れたストーリーを、アクロバットや曲芸、生演奏の音楽と組み合わせ、独自の演出を展開しています。この斬新な演出は、従来のサーカスとは一線を画し、海外からも高い評価を得ています。
2021年3月7日には、最長のサーカスショーとしてギネス世界記録に登録され、ますます注目を浴びています。カンボジア旅行といえば遺跡観光が有名でしたが、このサーカスも見逃せないイベントの一つです。シェムリアップでは毎日20時からショーが開催されているため、ぜひ訪れてみてください。
ファー・サーカスの演目
ファー・サーカスでは、数日おきに異なる演目が上演されています。単なるパフォーマンスだけではなく、ストーリー性のある演目が多く、観客を魅了します。どのショーも共通しているのは、動物を使わずに大道芸を中心にした構成です。ショーのテーマには、「戦争」「人種差別」「貧困」「人間関係」などが含まれます。
公式ウェブサイトでは演目のスケジュールが掲載されているので、予約前に必ずチェックしましょう。数日交替で上演されているため、リピーターの方でも常に新しい感動を味わうことができます。
演目名 |
---|
SAME SAME BUT DIFFERENT |
ECLIPSE |
PONLEU SAMNANG |
WHITE GOLD |
KHMER ANGKOR VILLAGE |
KHMER METAL |
INFLUENCE |
ファー・サーカスの成り立ち
内戦時代の難民キャンプ
ファー・サーカスの歴史は、カンボジア内戦時代に遡ります。当時、タイとの国境にあった難民キャンプで暮らしていた少年たちは、10年以上も閉じ込められ、生きる希望を失っていました。しかし、彼らは飛んだり跳ねたりして人々を楽しませることを決意し、その姿がフランスの国際支援団体の目にとまりました。彼らが持つ「人々を喜ばせたい」という気持ちは、過酷な環境にあっても失われることはありませんでした。その姿勢が多くの人々の心を動かし、彼らの笑顔と希望を届けることになりました。
NPO団体「芸術の光」
1993年にカンボジアの難民キャンプが解散され、内戦で孤児となった多くの子供たちは、故郷へと戻ることになりました。 その後、フランスのNGOが、難民キャンプにいた子供たちのために、バッタンバンに「芸術の光(Phare Ponleu Selpak)」という学校を建設しました。 内戦で傷ついた子供たちの心を癒やす役割を担っていたこの学校では、絵画を通じたカラーセラピーが行われ、真っ黒な暗い絵しか描けなかった子供たちは、徐々に色彩豊かな絵を描くことができるようになったそうです。
さらに、音楽や民族舞踊の授業が加わり、サーカスの技術を学ぶクラスも始まりました。サーカスの授業の講師には、内戦中に難民キャンプで人々に希望を届けていた少年たちが大人となって立っていました。
彼らは、「アート(芸術)の力を生きる力に」という思いを持って、次の世代の子供たちに引き継がれていくことになりました。
フランスからの支援
その後、フランスの支援によって、芸術の光学校の生徒たちはパリに留学し、大道芸から始まった彼らのショーはストーリー性を加えられ、海外公演で評判を呼ぶようになりました。
そして2013年、芸術の光学校は大胆な決断を下しました。それは、シェムリアップにサーカスの常設会場を設立し、毎日の公演を行うことでした。
当初は、観客が集まらずに苦労したものの、今では、シェムリアップのエンターテイメントの中心的存在となり、多くの人々から愛されるショーとなっています。
ファー・サーカスのミッション
2つのミッションをファー・サーカスは追求しています。
- カンボジアのアーティストに雇用機会を提供すること
- バッタンバンの「芸術の光」学校を支援すること
「芸術の光」学校では、無料で絵画、音楽、サーカス、IT技術を学ぶことができます。現在、1200人の子供たちが幼稚園から高校まで通っており、150人以上のアーティストが輩出されています。
ほとんどのアーティストたちは、非常に貧しい家庭で育っていました。 多くの子供たちはゴミ拾いなどの仕事で生計を立てていましたが、学校に行くと食事を提供してくれると聞いて、学校へ通うようになった子供たちもいました。 今では、自分たちが叶えたアーティストとしての夢を次の世代の子供たちに伝えるため、バッタンバンだけでなく、プノンペンのスラム街や貧しい農村など、様々な地域を訪れています。
無料で学ぶことができるバッタンバンの学校での教育の重要性や、自分たちが貧しさから抜け出せたように、努力することで夢を実現できることを子供たちに伝えることが、今後の重要な使命となっています。
ファー・サーカスのチケット購入方法
オンラインで簡単に決済ができるので、公式ウェブサイトからのチケット購入が最もオススメです。ホームページは全て英語表記ですが、手続きはシンプルです。
シェムリアップのサーカスは、ステージと客席が近く、迫力があります。特にA席は、キャストの表情や仕草がはっきり見えて、臨場感もたっぷりです。ほとんどのパフォーマンスが正面となるA席側で行われるので、感動も大きくなります。ただし、C席は場所によっては柱の影になることもあるため、見えなかったとなるとがっかりしてしまいますよね。予約する際には必ずA席を選ぶようにしましょう。シェムリアップに足を運ぶなら、A席から見た迫力あるサーカスを楽しんでみてください。
座席 | 料金 |
---|---|
A席 | 大人USD38 / 子供USD18 |
B席 | 大人USD28 / 子供USD15 |
C席 | 大人USD18 / 子供USD10 |
ファー・サーカスへのアクセス
サーカス会場は、市街地から少し離れた場所にあります。パブストリートから約2.5kmで、ソクサンロードを直進すると到着します。ただし、歩いて行くには遠すぎるため、トゥクトゥクなどのチャーターを利用することをおすすめします。周辺は人通りが少なく、安全性を考慮するなら往復でドライバーを雇っておくのがベストです。また、上演中にドライバーを待たせる時間があるため、チップを通常よりも少し多めに渡すことをおすすめします。
注意しておいた方がいいこと
サーカスの上演時間の20時を過ぎてからでは入場できない場合があるため、余裕を持って到着することが大切です。19時30分から会場に入場が可能です。自由席の場合は、混雑が予想されるため、早めの入場をおすすめします。
また、テント内には冷房がなく、扇風機で換気しているため、通常よりも暑く感じるかもしれません。うちわなどの持ち物を用意しておくと快適に過ごせます。蚊に刺されることもあるため、虫除けスプレーなどの対策も忘れずに持参しましょう。
ファー・サーカスを見に行こう
通常のサーカスとは異なり、間近で迫力満点のパフォーマンスを楽しめます。子供から大人まで楽しめること間違いなしです。また、ベトナム戦争、ポル・ポト政権による虐殺、内戦など多くの苦難を経て、1993年に正式にカンボジア王国が成立しました。ファー・サーカスのショーを見ることは、単なるエンターテイメントだけでなく、この国の歴史や文化を実感する貴重な機会でもあります。シェムリアップを訪れた際には、現地ならではの熱気あふれる雰囲気を存分に楽しんでください。